キャメルンシリーズ

「いのち」

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2010.10.21 Thursday

いのちPC版

そのとき全ての時が止まり全ての音が消えた。



地球上の愛と名のつく全てのものがただひとつの光のために
時を超え想いを超えて手をとり合うように集まってくる。
世の中で奇跡とよばれるものはこうして生まれる。
その奇跡こそが「命」というものなのだ。

・・・全ての命というものはこうして生まれてくるのだ。



その光との出会いをキャメルンルンは長い間まちこがれていた。
一番星に祈りをささげ満月の夜は東の空が明るくなるまで月に祈った。
”光”とどうやって出会うかもわからなかったが
その”光”が自分が今まで長い間さまよってきた
孤独という暗闇を照らしてくれる気がしていた。
求めても求めても手に入らなかった魂の飢えを癒す最後の希望が
その光にはあると信じたかった。
神よ、天よ、空よ、星よ、太陽よ。
風よ、雲よ・・・偉大なる大きな存在よ・・・
生きてきて良かった、産まれてきて良かったと思えるような
体の芯が喜びで震えるほどの・・・ ” 何かと ” 私は出会いたい・・・。
その熱き祈りのような想いがキャメルンルンのほほを涙となって流れた。



・・・キャメルンルンには母と呼べる存在がいなかった。
お父さんはいたけれど砂王と呼ばれるその父は、広い砂漠の王様、いつも忙しくしていた。
そのせいか小さい頃からキャメルンルンの心の中には、静かな冷たい青い玉のようなものがあり、それを孤独と呼ぶのだと大人になって知った。
もちろん王様の娘である彼女は、たくさんの美味しいものや恵まれた暮らしに囲まれて育った。
けれど心にはいつも冷たい青い玉がぽつんとあって、よくハートの奥が痛くなった。
その青い玉を癒すためにキャメルンルンは思いつく限りのあらゆる事をした。
たくさんの本を読み1人旅もし賢者とよばれる者がいると聞けば、どんな遠くへでも会いにいった。



それらは1つずつ経験という名の宝となり、キャメルンルンの心の引き出しに大事にしまわれていったが、何をしても誰と会ってもどんなことをしても、どうしてもどうしてもその青い玉は冷たいまま、心の中で動かずにいた。
そして時々その玉はくるくる回りながら、それはそれは澄んだ綺麗な声で、どこか遠くの聞いたこともない唄を歌うのだった。
その透き通るような美しく切ないメロディーを聞くと、キャメルンルンはなんとも哀しくなり1人泣いた。
けれど不思議に泣いたあとは、心地良い静けさに包まれて、孤独というものの持つ深い美しさを知ったことが、自分を守ってくれているようにも感じていた。


キャメルンルンがキャメルンバと出会った時、キャメルンルンはこの孤独の玉が、もしかしたら消えてなくなってゆくのかもしれない…と思った。



キャメルンバといると確かに楽しかったし安心した。
けれど孤独の玉はいつまでたっても、消えはしなかった。
キャメルンバと一緒にいてもキャメルンルンの心の中には、いつもその玉がいて、時々ハートの奥をきゅんと痛くした。
小さい頃から何も変わらないその痛みは、もはや彼女の体の一部になってしまったように思われた。
この痛みと共に生きていくしかないのだと、キャメルンルンは思った。
これも私自身なのだと。


そんな ある晩キャメルンルンは夢をみた。



目の前にはみたこともない美しい、エメラルドグリーンの大きな湖があり、その水面には 七色の光が躍るようにさしていた。
空を見上げると、絵本の中でしか見たことがないような大きなそれは、それは美しい虹が湖の上をおおうように守るように静かに架かっていた。
水面にさしている七色の光は、その美しい虹から降りそそいでいたのだった。



そして虹のはるか彼方から、可愛い歌声が聞こえていた・・・。
天使達だった・・・。
鈴の音のような可愛い歌声は、赤や黄や紫色した虹の天使達の声だった。
「ここは どこなの?このすてきな湖は、いったいどこにあるの?」キャメルンルンは天使に聞いた。
「あなたの心の中よ」黄色の天使が答えた。
「わたしの? 心の 中なの?」キャメルンルンは驚いた。
「そうよ この湖の底には あなたの宝が眠っているのよ」
「私の宝?」
「あなたはその宝と出会うために、生まれてきたのよ」ピンクの天使が言った。
それを聞くなりキャメルンルンの全身が震えた。



そして、あとからあとから涙が流れては落ちた。
なぜ泣いているのか解らないのに、涙は止まることなく流れつづけるのだった。
声を出してキャメルンルンは泣きながら、だんだんその涙がグリーンに変わっていくのをみた。
・・・そして涙は湖と同じ色になっていったのだ。



「この湖はあなたが今まで流した涙なのよ」水色の天使が言った。
「あなたの心の中の青い玉がくるくる回ると私達が唄を歌っていたのよ。聞こえたでしょ?」
・・・そうだった、たしかにどこか遠くの聞いたこともないような唄を、澄んだ綺麗な声で歌うのが聞こえていた・・・。
あれは天使の声だったの?そしてこの湖は私の涙だったなんて・・・。
キャメルンルンは目をぱちくりした。

・・・そこで 目が覚めた。



夢でみた”宝”が何かを知りたくて、もう一度眠りにつこうとしたが、ドキドキしてもう眠れなかった。
あまりにも美しいあまりにも光に満ちた、神々しい夢だった…。

その夢のことをキャメルンバに話すと
「いつかきっとみつかるよ、その宝は。大丈夫、時をまとう」と長いしっぽをふりふり揺らしながらそう言った。
「いつか…きっと…。」キャメルンルンはその言葉を心の中でつぶやいた。



遠くにみえるかげろうみたいに思われた。
手を伸ばしても伸ばしてもつかめない雲や、どんなに追いかけてもたどりつけない虹・・・。

そうゆう美しくはかない夢の中に、確かな光の存在を信じる力こそが、生きていく強さなのだと、砂王が長く続いた乾季の時に言っていた言葉を思い出した。



強くなりたい・・・。
キャメルンルンはつぶやく。
いつか出会うその光を守れる自分でいたいと思う。
命をかけてでも何をすててでも護りたいほど愛する何かと、いつか必ず出会いたいと思った。
だから”いつかきっと”の、その時までにやれることを1つづつしゃんと生きて、いつその時がきても大丈夫なように、自分のことを大好きになっていようと、キャメルンルンは思った。


それから いくつもの季節がすぎた。



心の中にはいつも ” いつか・・・きっと・・・ ” があったけど
” 全てのことには時がある ” とキャメルンルンは待った。
・・・そしてついにその時がやって来てことをキャメルンルンとキャメルンバが知ったのは、二人が同じ声を熱い乾いた南風の中に聞いた時だった。
「まっすぐ、まっすぐ 、まっすぐ、まっすぐ、何も疑わず、ただまっすぐ、まっすぐ、まっすぐ」その声はそう言っていた。



キャメルンルンとキャメルンバは顔を見合わせ、黙って言われるまま、ただまっすぐ、まっすぐ、歩き出した。
まっすぐ、まっすぐ、2人は進んだ。
まっすぐ、まっすぐ、2人は歩いた。
次の日も、また次の日も。
何も疑わず、まっすぐ、まっすぐ、ただ歩いた。



確かなものなど何もなかった。
確かな約束など何もなかった。
けれど2人に出来ることは、ただまっすぐ、歩くことだけなのだ。
その事だけは確かな、ただ1つの事だった。



ただの一度も2人は振り返ることもしなかった。
ただの一度も横をみることも、この道が正しいのか迷うこともしなかった。
信じ続けることだけが、今の2人を支えていた。
何か話せば、何かがこわれてしまう気がした。
少しでも休めば、何かが消えてしまうような気がした。
何かほんの少しでも”道”とちがうことをすると、全てが音を立てて崩れてしまうように思えたのだ。
だから2人はただ黙々と、まっすぐ進んだ。
あまりの疲労と空腹に倒れそうではあったけど、2人の心の中には凛とした1本のしっかりした木が立っていて、2人はその木の下で休んだり笑ったりできるのだ。
体はこんなにヘトヘトなのに心はどんどん澄んでいき、空を飛べそうなぐらい軽やかに澄みきっていた。



…… こんなことは初めてっだった。
2人はものすごい幸福の中に包まれ、愛しまれ守られているのを感じていた。
あまりにも幸せであまりにそれが嬉しくて、2人は見つめ合いうなづいた。
もう自分たちが何のためにこうして歩き続けているのかさえわからなくなるほど、2人は満たされていた。



キャメルンルンの目から涙が流れ落ちた。
キャメルンバも泣いていた。2人は涙を流しながら、その場に倒れこんだ。
何日も何日も何も食べずに歩き続けていた体は、もう動くこともできなかったのだ。



2人はそのまま気を失っていった。
目の奥にキラッと光る何かがみえたが、遠のく意識はそれを追うことができなかった。


・・・どのくらい時がたったのだろう。

あたたかなやわらかな何かが、体全体をやさしくなでている感触でルンルンは目を開けた。
辺り一面それは美しいエメラルドグリーンの水が、体を包んでいるではないか・・・。
「ココは?どこ?天国っていうところなの?」キャメルンルンがつぶやくと、ずっと彼方の上の空から聞いたことのある声がした。
「いいえ、キャメルンルン。これはあなた達の涙の湖よ」



・・・そうだ!
この声は、あの時みた夢の中の天使の声だ!
そしてこの湖も、あの夢の中の湖なんだ…。
まっすぐ、まっすぐ行った先は私の夢の中だったんだ…。
それならこの湖の底には、私の宝があるはず!
私はその宝と出会うために産まれてきた、その宝が・・・


そうキャメルンルンが思った時だった。



後ろでザブンと音がしてキャメルンバが立ち上がって言った。
「その宝は僕が取りに行こう」
そうしてキャメルンバは何の迷いもなく、エメラルド色の水の中へ沈んでいった。
泳げるはずのないラクダのキャメルンバなのに、まるで魚みたいに、何の恐れもなく水の中へ入って行った。

・・・それから、キャメルンバが再び水面から元気な姿を見せるのをキャメルンルンはドキドキしながら待った。



・・・やがて水面が急にキラキラ輝き出したかと思うとザブーン!と大きな水しぶきと共に、キャメルンバが現れた。
長いしっぽに大事そうに抱えてきた光のまばゆさを、キャメルンルンは一生忘れることはないだう。

その光は七色に輝くそれはそれは美しい玉だった。
「これが私の宝?この光と会うために私は生まれてきたという…その宝なの?」
キャメルンルンがつぶやくと、7人の虹の天使達が、あの夢の中で聞いた澄んだ歌声で、空の彼方からいっせいに降りてきて、その玉をキャメルンバのしっぽから受け取り、また高い空へ向かって昇っていった。



天使達の行方を追って空の彼方を見上げたキャメルンルンの目に、大きな輝く虹が飛び込んできた。
まさにあの時みた夢の景色そのものだった。
すると天使達はその玉をそうっと、それはそれは大切そうに愛おしそうに、1人1人交代で抱きしめたあと、虹の一番高いところに玉をそうっと置いた。
玉はころころと虹のすべり台を転がっていく。
とても綺麗な音色と光をはなちながら。



その時だった。
何か大きな力がキャメルンルンの背中を押し、虹の架かるたもとに彼女を連れて行った。
その力は強い風のように、時々キャメルンルンを尊くために、彼女の元に現れ彼女を守ってくれるのだった。
キャメルンルンは風に身を任せ虹のたもとで全てを受け入れようと待っていた。
そして・・・玉は…いたずらっ子のように虹のたもとからピョンとジャンプしたかと思うと、キャメルンルンのお腹の中へ消えていった・・・。



こうして待ち望んだ新しい命は、キャメルンルンに宿った。
命を授かることのすばらしさは、命を持つものが生きていく中で、経験する奇跡の中でも、何ものにもかえがたい宇宙からのプレゼントだ。
それは今まで生きてきた中で、流した涙や心の痛みや眠れなかったほどの孤独が、いきなり
「ああ、これがあったからこそ、この子を今、自分は育てられるのだ」と。
それまではネガティブだった全てのことが、雨の空に輝く虹がかかるようにポジティブなこととして、感謝の気持ちで受け止められるようになるからだ。
神様はなんてビックリする素敵な贈り物をするのだろうと、そのプレゼントを受け取った人は思うことだろう。
新しく生まれる命があんなにまぶしく思えるのは、こんなふうに長く暗いトンネルに、光を与えてくれるからなのだ。


・・・ようこそ、ようこそ、光の中へ・・・
    ここにはもう、悲しみも孤独もありません。
     愛と優しさだけが、あなたを包むよ・・・。



16:19 | PC版 | comments(0) | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版1

そのとき全ての時が止まり全ての音が消えた。

地球上の愛と名のつく全てのものが、ただひとつの光の為に時を超え想いを超えて手をとり合うように集まってくる。世の中で奇跡とよばれるものはこうして生まれる。その奇跡こそが「命」というものなのだ。・・・・・全ての命というものはこうして生まれてくるのだ。

2008.06.26 Thursday

いのち携帯版2


その光との出会いをキャメルンルンは長い間まちこがれていた。
一番星に祈りをささげ満月の夜は東の空が明るくなるまで月に祈った。”光”とどうやって出会うかもわからなかったがその”光”が自分が今まで長い間さまよってきた孤独という暗闇を照らしてくれる気がしていた。求めても求めても手に入らなかった魂の飢えを癒す最後の希望がその光にはあると信じたかった。神よ天よ空よ星よ太陽よ。風よ 雲よ……偉大なる大きな存在よ…生きてきて良かった産まれてきて良かったと思えるような体の芯が喜びで震えるほどの…”何かと”私は出会いたい…。 その熱き祈りのような想いがキャメルンルンのほほを涙となって流れた。

17:06 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版3


・・・・・キャメルンルンには母と呼べる存在がいなかった。お父さんはいたけれど砂王と呼ばれるその父は広い砂漠の王様いつも忙しくしていた。そのせいか小さい頃からキャメルンルンの心の中には、静かな冷たい青い玉のようなものがあり、それを孤独と呼ぶのだと大人になって知った。もちろん王様の娘である彼女は、たくさんの美味しいものや恵まれた暮らしに囲まれて育った。けれど心にはいつも冷たい青い玉がぽつんとあって、よくハートの奥が痛くなった。その青い玉を癒すためにキャメルンルンは思いつく限りのあらゆる事をした。たくさんの本を読み1人旅もし賢者とよばれる者がいると聞けば、どんな遠くへでも会いにいった。

17:04 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版4


それらは1つずつ経験という名の宝となり、キャメルンルンの心の引き出しに大事にしまわれていったが、何をしても誰と会ってもどんなことをしても、どうしてもどうしてもその青い玉は冷たいまま、心の中で動かずにいた。そして時々その玉はくるくる回りながら、それはそれは澄んだ綺麗な声で、どこか遠くの聞いたこともない唄を歌うのだった。その透き通るような美しく切ないメロディーを聞くと、キャメルンルンはなんとも哀しくなり1人泣いた。けれど不思議に泣いたあとは、心地良い静けさに包まれて、孤独というものの持つ深い美しさを知ったことが、自分を守ってくれているようにも感じていた。

17:04 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版5

キャメルンルンがキャメルンバと出会った時、キャメルンルンはこの孤独の玉が、もしかしたら消えてなくなってゆくのかもしれない…と思った。

キャメルンバといると確かに楽しかったし安心した。けれど孤独の玉はいつまでたっても、消えはしなかった。キャメルンバと一緒にいてもキャメルンルンの心の中には、いつもその玉がいて、時々ハートの奥をきゅんと痛くした。小さい頃から何も変わらないその痛みは、もはや彼女の体の一部になってしまったように思われた。 この痛みと共に生きていくしかないのだと、キャメルンルンは思った。これも私自身なのだと。

17:03 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版6

そんな ある晩キャメルンルンは夢をみた。

目の前にはみたこともない美しい、エメラルドグリーンの大きな湖があり、その水面には 七色の光が躍るようにさしていた。空を見上げると、絵本の中でしか見たことがないような大きなそれは、それは美しい虹が湖の上をおおうように守るように静かに架かっていた。水面にさしている七色の光は、その美しい虹から降りそそいでいたのだった。

17:02 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版7


そして虹のはるか彼方から、可愛い歌声が聞こえていた…。天使達だった…。鈴の音のような可愛い歌声は、赤や黄や紫色した虹の天使達の声だった。「ここは どこなの?このすてきな湖は、いったいどこにあるの?」キャメルンルンは天使に聞いた。「あなたの心の中よ」黄色の天使が答えた。「わたしの? 心の 中なの?」キャメルンルンは驚いた。「そうよ この湖の底には あなたの宝が眠っているのよ」「私の宝?」「あなたはその宝と出会うために、生まれてきたのよ」ピンクの天使が言った。それを聞くなりキャメルンルンの全身が震えた。

16:59 | 携帯版 | - | - | - | - |
2008.06.26 Thursday

いのち携帯版8


そして、あとからあとから涙が流れては落ちた。なぜ泣いているのか解らないのに、涙は止まることなく流れつづけるのだった。声を出してキャメルンルンは泣きながら、だんだんその涙がグリーンに変わっていくのをみた。・・・・そして涙は湖と同じ色になっていったのだ。

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2008.06.26 Thursday

いのち携帯版9


「この湖はあなたが今まで流した涙なのよ」水色の天使が言った。「あなたの心の中の青い玉がくるくる回ると私達が唄を歌っていたのよ。聞こえたでしょ?」……そうだった、たしかにどこか遠くの聞いたこともないような唄を、澄んだ綺麗な声で歌うのが聞こえていた…。あれは天使の声だったの?そしてこの湖は私の涙だったなんて……。キャメルンルンは目をぱちくりした。

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